培養室の耐震化を考える(1)

東日本大震災が起きてから1年半以上が経過した。



恵愛病院生殖医療センター周辺の震度は5弱であったのだが、ちょうど恵愛病院本館の産科外来を担当していて
生まれて初めて経験するような激しい揺れが長時間続いていたのを鮮明に覚えている。



この周辺の地域では、本震の最中からすでに停電となっていた。
ライフラインもいつ復旧するかわからず、
外来はすぐに中止になり、入院中の患者様も含めなるべく早く帰っていただいた。



恵愛病院生殖医療センターの入るリプロ館は新築のビルであり、
地震にはかなり強いようで建物はほぼ無傷であった。
震災直後の3月15日には予定通り引き渡された。



当時はまだ恵愛病院生殖医療センターのオープン前であり、
培養室はもちろん稼働前で、中に入る機器類もすべて納入前であった。
もともと、3月11日震災直後の3月17日に一括して納品予定であったのだが、
延期になるかと思いきや、これがすべて予定通り納品されたのである。
当時は感覚がマヒしている部分もあったが、今思えばすごいことで関係者には頭が下がる。



関東地方の不妊専門施設などでも、この震災により培養室内の機器が転倒または激しく揺れたため
インキュベーター(ふ卵器)の中で、培養中の胚が外に飛び出してしまったり、
だめになってしまったりという報告が相次いでいた。



日本生殖医学会によるアンケートのまとめ
http://www.jsrm.or.jp/announce/012.pdf
によると東北地方の施設で11.5%、関東地方でも6.0%の施設で
なんらかの生殖細胞の喪失がおきていたということである。



天災による影響はしかたがないと、あきらめるのは簡単であるが、
何もせず、手をこまねいているだけなのも悔しい。
患者様の大切な胚(卵)をできるだけ守っていくのも我々の使命である。



今後、来たるべき東海大地震や首都圏直下型大地震に対して
どのように対処していくべきかを考える。